マスタードシードを使いこなす(効能・相性の良い食材)

南インドカレーに欠かせないマスタードシード

「マスタードシード」は、辛味のスパイスに属するスパイスですが、そのままでは全くなんの香りもしません。

すり鉢ですり潰して、ビネガーや塩、砂糖を加えることで酵素が働き、辛味と旨みが出現します(潰して水分を加えることで酵素が出現)。それが日本でもお馴染みの、瓶詰めマスタードシードです。

西欧料理では、瓶詰めの粒マスタードをお肉やソーセージなどと一緒に食べたる薬味的な使い方と、調理の下ごしらえで食材の臭みを消しとして使う方法の2種類があります。

マスタードシードの成分

アブラナ科の1年草 *
ブラウンマスタード系:シニグリン(アリルイソチオシアネート)
イエローマスタード(ホワイト)系:シナルビン(パラオキシべンジルイソチオシアネート )

一方、インド料理では、マスタードシードはそのままフライパンで油と一緒に炒め、オイルにマスタードシードの成分を抽出してから野菜や肉などの食材を炒める使い方をします。

インドカレーを作る時にスパイスはこうした使い方をされ、マスタードシードもこうした使い方が一般的です。
この時マスタードシードは、辛味ではなく、香ばしいナッツ臭をだすことが目的で使われています。

このようにスパイスの香味成分を油に抽出することを「テンパリング」と呼びます。


「マスタードシード」はカレーの「スタータースパイス」としてとても有名です

肉や魚、野菜を炒める時、油と一緒に小さじ1程度のマスタードシードを入れ、はじけてきたら食材を炒め始めます。
いつもの炒め物にほんのり香ばしさが加わって美味しさが増します。

市販のカレールーでカレーを作る時にも、具材をマスタードシードで炒めてみてください。
ぐんっと旨味のあるカレーに仕上がります。

根菜類の野菜炒めなどは、塩や胡椒だけで炒めるよりも、香ばしく、深みを加えることができるのでオススメです。

スパイスコーディネーターの食薬ノート

鉄分、マグネシウム、リン、などのミネラルが豊富に含まれていると言われるマスタードシード。 

辛味成分であるアリルイソチオシアネートは、ポリフェノールなどで注目されているフィトケミカル(別名:ファイトケミカル)の一種で、抗酸化作用はもちろんのこと、抗癌作用、腫瘍化防止があるとされています。

マスタードシードの効能・美容効果

  • 鉄分、マグネシウム、リン、などのミネラルが豊富
  • 抗酸化作用、抗癌作用、腫瘍化防止効果
  • 便秘や嘔吐などの腸の不調にも効果アリ
  • 消化促進、利尿、抗菌効果

薬理効果がそれほど注目されているスパイスではありませんが、便秘や嘔吐、消化促進、利尿にも効果があるとも言われています。

また、抗菌効果も期待できる為、ピクルスなどには風味付けと保存性の両方を期待して利用されます。 

マスタードシード3つの使い方

「練り辛子」も「粒マスタード」も、ナッツの香りのインド料理も、このマスタードシード1本でできちゃいます。

マスタードシード3つの使い方

  • 練り辛子
    すり鉢で粉砕し、ぬるま湯で溶けば、おでんに合うフレッシュな練りカラシに。
  • 粒マスタード
    荒めに砕いて白ワインやビネガーと合わせればソーセージに合う粒マスタードに。
  • スタータースパイス
    ホールのままフライパンで軽く炒めてから食材を炒めればインド料理に。

アーユルヴェーダでは作り立ての食べものだけに、「プラーナ(エネルギー)」やオージャスが宿ると言われています。

加工された調味料をいくつも冷蔵庫に並べるのではなく、スパイスボトル1本で、お料理に合わせて即席調味料を作るのも、1つのワクワクに繋がります。
キッチンもスッキリ!一石二鳥です。

マスタードシードと相性の良い食材 

マスタードシードの特徴の1つに、液体にとろみをつける「乳化作用」があります。
荒くすり潰してドレッシングに利用したり、マリネ、カルパッチョにかけると風味的な相性だけでなく、乳化作用も加わってとろみのあるソースやドレッシングが作れます。

また、軽く潰してお湯を加えたマスタードシードをお肉やメカジキなどの脂分の多い食材にたっぷりつけてローストすると香ばしくて美味しいだけでなく、マスタードの酵素の力でお肉が柔らかくジューシーに仕上がります。

マスタードシード適合食材

  • マリネ・カルパッチョに使う淡白な魚やシーフード
  • 豚肉・カジキマグロなど脂分の多い魚肉
  • ニンジン・大根・ハスなどの根菜類
  • レモンなどの柑橘類

ニンジン、大根、ハスなどの根菜類をマスタードシードで炒めれば、インド風の野菜炒めやレリッシュが簡単に作れます。

レモンなどの柑橘類とも相性が良いので、炒めた根菜類にレモンを絞れば美味しさも抜群です。

最後にレモンを搾って食すようなお料理(鳥の唐揚げ・フライなど)のスタータースパイスとしても是非マスタードシードを使ってみてください。

いつもの「おうちごはん」のバリエーションになると思います。

マスタードシードの香りや特徴

マスタードシードは、ブラウンマスタード、オリエンタルマスタード、ブラックマスタード、イエローマスタードの4つに分類されますが、辛味成分からみると「ブラウンマスタード」と「イエローマスタード」に2分されます。

マスタードシードの種類

  • 和からしは揮発性で刺激が強い「ブラウンマスタードシード」
  • 洋からしは不揮発性で刺激が弱くマイルドな「イエローマスタードシード」
  • マスタードシードは酵素の働きで辛くなる
    マスタードシードはそのままの状態では無味無臭で何の芳香も辛味も発しませんが、すり潰すなどしてから水分と合わせると、辛味と香りを発します。
    また、炒めることで甘いナッツ臭がたちます。

    酵素の働きで辛味成分が生成されるので、ぬるま湯などで力強く溶き、10-15分置いてから使用すると旨味のあるカラシになります。
  • 「化学的な臭消し」と「芳香性の臭消し」を持つマスタードシード
    マスタードシードは、辛味成分が肉や魚のタンパク質と反応して「化学的に臭みを分解する」働きと、ツンとした芳香が鼻の粘膜を刺激することで「素材の臭みを感じなくさせる」効果の両方を持ち合わせています。

    お料理の下ごしらえに使う場合とソーセージにつけて食べるというような薬味的な使い方のどちらにも効果を発揮してくれます。
  • 酵素で生成される辛味は熱に弱い!
    マスタードの辛味成分は酵素によるものですので、お料理の下ごしらえに利用し熱を加えた場合は、辛味は飛んでしまいます。

    辛味を期待して使う場合は、おでんやソーセージのように、つけたら熱を加えず、そのまま食べるという具合に薬味的な利用をします。

    下ごしらえでお肉などに使う場合は、「素材の臭みを消す」為で辛味を期待したものではありません。

    お料理でマスタードシードを使用する際は、「臭みを消すために使う」のか「お料理に辛味をつけたい」のか、使用目的をハッキリと意識して使うようにしましょう!